きれいな音で弾きたいんです。

チェロのレッスンも楽しく進んで、どんどん難しいテクニックが必要になってくると、つい忘れがちになるのが、基本。ということで、音階やアルペジオなどをウオーミングアップ代わりに練習しておられる方も多いと思います。

 

でも音階やアルペジオで左指が速く動けばそれだけで満足していませんか。

 

 私が初心者のレッスンをしていて時々思うことは、皆さんに「自分の楽器からどんな音が出ているか」を注意深く聴く習慣があまりないということです。「良い音程」や「その曲オリジナルの速さで弾くこと」には皆さん一所懸命取り組んでくださいますが、「音質」には残念ながら。。。初心者の方からは「はいはい、でもね先生、ここ音程も難しいんです。それにもっと速く弾かないと曲になりません。それに、ピアノという楽器は音程の心配はないし、10本も指が使えるから速く弾けるけど、チェロはたった1つの音を出すだけに右手も左手も使って大変なんです。もちろんもっときれいな音では弾きたいけれど、そんな練習ばっかりでは楽しくないし。」というオーラが出てますね~(^^ )  

 

オーケストラで弾いている方など、いつも目の前に大量の楽譜を抱えている方や、コンチェルトなど難しいテクニックが必要な曲に取り組んでおられる方も、ついつい「まずは弾けない難しい個所を何とかしなければ」と思ってしまいます。でもどうでしょう、オーケストラのチェロパートにもきれいなメロディーを弾かせてもらえる、ここぞという箇所がありますし、コンチェルトにも印象的なメロディーの箇所がありますが、それらはたいてい、一つ一つの音に気持ちを込める曲想でゆっくり弾くところではないでしょうか。リズムも音程もさほど難しくない、でもきれいな音できれいに歌うところ。そういうところをきれいに弾けることを次の目標にしてみませんか。

 

でも、一口に「音をきれいにする」といっても初心者の皆さんには漠然として、何をどうしたらいいのかわからないと思います。「具体的に何に注意して聴けばいいのか」を御存じないから、自分の楽器から出ている音を聴いているつもりでも聴けていない、目の前の音符の難しい箇所にばかりが気になるのではないでしょうか。

 

そこで、皆さんが取り組みやすい、「ここに気をつけましょう」という4つのポイントをご紹介したいと思います。

 

1つの「音」とは

1. 「出始め・立ち上がり(アタマ)」

2. 「中ほどの響き」

3. 「終わり(シッポ)」

と大きく3つの部分に分かれていて、それがどんどん

4. 「繋がって」

メロディーラインを作っていきます。

 

ですから、この音の「アタマ」「まんなか」「シッポ」「つなぎ」がそれぞれ「自分の思うようなきれいな音」になっていればいいわけです。

 

とはいうものの、皆さんがこれらすべての部分にいつもいつも気を配っていることは難しいと思いますので、この4つのポイントのうちのどれか一つ、例えば「今回は音の立ち上がりにだけ気をつけよう」とか「今回は真ん中の響きに気をつけよう」とか決めて、そこに集中して「自分の音を聴く」練習をしてみてください。

 

「聴く」ことができるようになると、自分が出す音の音質が揃っていないことに気がつくようになると思います。うまく「アタマ」がついている音とそうでない音、音符を伸ばしているあいだ楽器の響きが保てている音とそうでない音、思うように消えていく音と音がつぶれて終わってしまう音、次にきれいに繋がっている音とつなぎ目がきれいでない音など。

 

その違いに気づくことができるようになる「耳」を持つのがまず最初の目標です。 

自分の楽器から変な音が出ている箇所をピンポイントで気づけること。これだけです。

汚いところをきれいにするためにどうするかはまだその先のステップです。

 

前置きが長くなってしまったので、具体的な実践編は次回からということにしましょう。

 

 

今年もこの「チェロ初心者のためのやさしい紙上レッスン」をお読み下さりありがとうございました。私の教室の生徒さん達のみならず直接存じ上げない方からも、取り上げて欲しいテーマのご要望や内容へのご意見、励ましのお言葉を多数いただきました。その一つ一つがとてもありがたく、嬉しく頂戴いたしました。この紙上レッスンはもともと私の生徒さん達へのレッスン内容の備忘録として書き始めたものです。対面で手取り足取り習ったことの備忘録としてなら理解できても、初めて私のこの拙文を読んでくださる方には何が言いたいのかさっぱりわからないところも多々あると思います。お気づきの点がございましたらぜひこちら>>からご意見をお聞かせいただければ幸いです。

これからもこの紙面が、初心者の皆さんのチェロ演奏への小さなヒントとなれますよう努力いたしてまいります。

来年も「こたかむつみチェロ教室」をよろしくお願いいたします。

 

皆さま、どうぞお元気で素敵な新年をお迎えください。

2018年 暮

こたかむつみ

 

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