今回は「斜め懸垂をしている体」のうちの「鉄棒を握っている手」をチェロの演奏に当てはめてみましょう。
1. 1枚目の写真は、左手の4本の指全部で指板を押しているときの手の形です。
これを、ピーターパンに出てくる「フック船長のカギ手」または「リカちゃん人形の手」だと思ってください。これ全体が一つの動かないパーツです。ですから指を一本一本うごかすことはできないと仮定しましょう。
2. 上の写真を「リカちゃんの手」だと思えない方は、潮干狩りで使う「熊手」だと思ってもいいですね。
3. 上の1.の手のパーツをチェロの弦の上に持っていきます。まだ弦を押し下げません。軽く引っかけているイメージです。
指の開き具合は音程通りでなくてよいです。楽に自然に引っかけます。
指が曲がっているのでうまい具合に引っかかります。
指板の裏の親指は軽くネックに触れていてもいいし、離れていてもいいです。どちらにしてもチカラをいれてはいけません。
左手の形で一番大切なのが、「胸を近づけながら弦を胸のほうに引っ張りこむときのチカラ」をどこで受け止めるかです。
この写真は、ラップの芯にトレーニング用のゴムチューブを通して二つに折り、端を高い位置に固定したものです。作り方はこちら>>
この持ち手を引っ張るときには、持ち手に「手の平・たなごころ」を引っかけるようにして引っ張りますね。引っ張る力に負けないように、手の平が開かないように手の平をしっかり折り曲げて丸みを作り、その丸みをキープして、力が逃げないようにしています。この丸みをキープできなくなると、手が開いてしまいもうチューブを引っ張れません。
この手の中の「ドーム状の空間」でチカラを受け止めて、どんなに引っ張られても手の形を崩さないようにすること がとっても大切です。
チェロを弾いているとき、指先はもちろん弦を触っているのですが、今使っている指先を直接どうこうして弦にチカラを入れるというより、
1. 形の崩れない(リカちゃんの)手で、持ち手にぶら下がって
2.「斜め懸垂をするように」胸を出しながら持ち手を引っ張り込むと、
3. 二次的に、手の先に付いている「指」が弦を押している というイメージです。
この方法なら 1本1本の指が弱くても、手の形を丸くキープできさえすれば、手の平全体のチカラも使って楽に弦を押すことができます。
次に良い例と悪い例を挙げます。
「良い例」
ピアノを弾く時の「手を卵形に丸く」と同じようにイメージしてください。
指で弦を押さえてる時も、指を上げて弦を押さえていない時も、手の中に「卵」を入れているような形です。
1本指で押さえているときも、ヴィブラートをかけるために親指を離しているときも、手の内側のくぼみをつぶさないようにしてください。この内側のくぼみで背中からの引き込むチカラを受け止めます。
また、1と2の指の間隔を全音の幅に広げるために、指を倒して手の平を少し駒のほうに向ける手の形(拡張型とか広い形とか呼ばれている手の形)を作るときがあります。この時も、手の中の丸みの形はすこし変形はしますが、つぶれてしまうことはありません。
「悪い例」
手の内側のドームがつぶれてしまっています。手首が落ち込んでいます。
これでは背中からのチカラが指先にまで伝わりません。その結果、指のチカラだけで弦を押すことになり、指がシンドイわりにはいい音になりません。
指が倒れてしまっています。ダブル(重音)を弾こうとすると倒れた指が隣の弦に触れてしまい、きれいな音がでません。
まだ、「チェロ弾きの左手」を作っている段階の初心者のかたの場合、弱い指(例えば4の指)や手の平の端っこの指(1の指や4の指)だけで弦を押そうとしたときに、手の平のくぼみが圧力に耐えきれずにつぶれ、先ほどの「悪い例」のようになってしまいがちです。
また、ヴィブラートを指先や手首からかけてしまうクセのある方も、この手の形になっていることが多いです。
では次回は「弦を押す動作」です。きれいに形作ったこの「リカちゃんの手」を指板の方向に近づけていきましょう。
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